1912年4月14日23時40分ごろ。北大西洋・ニューファンドランド沖で、当時「世界最大」と称された海難事故が発生していた。無線機の故障、船員間の連携不足、警告の聞き逃しなど、多くの不備が重なった結果、豪華客船タイタニック号は氷山に衝突し、船体が損傷。やがて沈没してしまった。総重量約4万6千トンの巨体が海中へと沈むなか、船員や乗客たちはマイナス2度の海に投げ出され、犠牲者は1513人にものぼったという。件の事故は連日報道され、多くの情報誌の紙面を飾った──「不沈船『RMSタイタニック号』、沈む」と。

あれ、タイタニック号の前についてる「RMS」ってなに?

「タイタニック」観た時に聞いたなァ。
豪華旅客船タイタニック号は「郵便船」!
タイタニック号を所有していた当時のホライト・スター・ライン社は、同船の正式名称が「RMS Titanic」であることを強調していました。頭についた「RMS」の文字は艦船接頭辞(Ship Prefix)と呼ばれ、船の役割や所有元、特出する機能などを示す略語です。
同社が、タイタニック号が「RMS」であることを推していたのもそのはず。これは「Royal Mail Ship」の略で、イギリス政府の郵便会社、Royal Mail(ロイヤルメール)の郵便を運ぶ船であることを意味します。この接頭辞は、厳選された船にのみ与えられる称号のようなもので、イギリス政府のお墨付きであることを指しています。つまり、タイタニック号は当時世界最大級の豪華客船であると同時に、重要な郵便物を運ぶ「郵便船」だったのです。
実際に、船内のF・Gデッキには郵便局が設置され、手紙を書くための紙や便箋を購入できたのだとか。「RMS」の称号を背負う船の使命は重く、船で働いていた郵便局員は沈没の最中でも郵便物を死守せねばと業務にあたったとの証言も・・・。タイタニック号が出した救急信号を拾い、氷山衝突から2時間40分後に救助に駆けつけたのも、同じく「RMS」のカルパチア号でした。同船に助けられ、710人が生還したとのこと。

あ、でもさ。映画の船には「RMS」って書いてなかったような・・・。
さまざまな「艦船接頭辞」
「RMS」は、ロイヤル・メール社との契約を経て得られる、とても名誉ある艦船接頭辞。ということは、契約が切れたり、役割を果たしたりすればその船は「RMS」ではなくなります。では、「RMS」である以前に、タイタニック号にはどのような接頭辞がついていたでしょうか。
答えは「SS」(Steamship)、「蒸気船」です。もっと厳密に言えば「TSS」(Triple-screw Steamer)という、スクリューが三つ搭載された蒸気船であると示されていました。その船が乗客を乗せる船であることを示す艦船接頭辞は見つからず、一般的に客船には「SS」、あるいは「MS」(Motor Ship)、モーター船の接頭辞がつくようです。
海に浮かぶ船には、載せているものや動力の種類、またその使用用途によって接頭辞がつくそう。あるいは、全く用いない場合もあるのだとか。
搭載する駆動力の種類を示すもの
- 「SV」(Sailing Vessel)、帆船
- 「TEV」(Turbine Electric Vessel)、ターボ・エレクトリック推進船
- 「NS」(Nuclear Ship)、原子力船
- など
輸送している商品やコモディティを表すもの
- 「LNG/C」(Liquified Natural Gas Carrier)、液化天然ガス輸送船
- 「MF」(Motor Ferry)、自動車フェリー
- 「NS」(Nuclear Ship)、原子力船
- など
使用用途のはっきりしているもの
- 「RV」(Rescue Vessel)、救助船
- 「FV」(Fishing Vessel)、漁船
- 「Merchant Vessel」、商船
- など
「Ship」「Vessel」「Ferry」「Carrier」・・・。こうしてみると、「船」を意味する言葉ってたくさんありますね!
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